木次線は生き残れるのか?
- 11時57分
- カテゴリ:鉄道ネタ
西日本旅客鉄道は今度こそ不採算路線の整理に力を入れるようです。
■不採算路線整理に本腰を入れる西日本旅客鉄道
西日本旅客鉄道は「輸送密度二千人未満の路線は鉄道路線として相応しくない」とし、不採算路線の整理に向けて改めて動き始めました。
この動きは以前からありましたが、三江線廃止くらいしか成果は出ませんでした。
しかし、新型コロナウィルス蔓延で鉄道業界が大打撃を受け、もはや二進も三進も行かなくなったようです。
既に芸備東線, 大糸北線などで廃止に向けた動きを見せております。
木次線も廃止候補に上がっている事は言うまでもありません。
■もはや鉄道どころかバスですら無理な木次線南部
廃止対象路線の選別のため、西日本旅客鉄道は輸送密度の算出に当たり一部路線の区間を細分化しました。
それに拠ると、木次線は令和元年度まで全線の輸送密度のみが公開されたものを、令和 2年度からは出雲横田で区切られる事になりました。
一説に拠れば出雲横田以南の輸送密度は『奥出雲おろち号』の利用者を除けば何と 5人/キロ/日。
これが本当なら、もはや出雲横田-備後落合間は鉄道どころか路線バスですらやっていけない数値となっております。
□『奥出雲おろち号』廃止は、出雲横田以南廃止の前段階?
その『奥出雲おろち号』の利用者を入れても、木次線・出雲横田-備後落合間の輸送密度は 18人/キロ/日(令和 2年度)しかありません。
しかも『奥出雲おろち号』は令和 5年に廃止が決定しております。
後継として山陰本線で運転中の『あめつち』投入が予定されておりますが、車輌の都合で出雲横田以南へは入線しないとの事。
もはや出雲横田以南を見限ったのではないかとさえ言われる有様です。
□そもそも沿線に人がいない!
そもそも、木次線・出雲横田以南については沿線の過疎化が更に進行しております。
もはや沿線には人間が住んでいないのです。
僅かに残る住民は移動には自家用車を使い、中国山地の高校には寮があるので高校生も通学の必要がない状況です。
それでも、並行する国道は県外からの観光客でそれなりに賑わっております。
要するに、木次線・出雲横田以南はもはや地元の足は言うに及ばず観光路線ですらないのです。
- 強いて言えば"鉄オタの遊具"でしょうか?
■唯一の生残り手段は"特急『ちどり』復活"
そんな木次線が唯一生残れるとしたら、それは陰陽連絡線としての地位回復しかありません。
かつては広島-松江間には急行『ちどり』が木次線経由で五時間掛けて運転され、山陰山陽地方の国鉄では数少ないドル箱列車となっていました。
木次線が生き残るには特急『ちどり』しかないと言う訳です。
これなら地元の人が乗らなくても、大都市・広島からの需要で充分やって行けます。
□高速バスに絶対勝てない『ちどり』
…と言いましたが、現実はそんなに甘々ではありません。
現在、広島-松江間には高速バスがありますが、所要時間は最速達便で三時間十分前後。
逆立ちしても『ちどり』では勝てませんし、木次線にお客を戻す事は出来ません。
□『ちどり』が高速バスと戦えるには?
このため、芸備西線と木次線の高規格化が提案された事もありますが、廃止前提で動いている西日本旅客鉄道がそんな事をする筈はありません。
そうなると、県が芸備西線と木次線の高規格化を行わなければならないのです。
*まずは高速化
上述の通り、高速バスに打ち勝って木次線を蘇らせるには、最低でも広島-松江間の所要時間で三時間を切らないといけません。
単純に営業キロ(宍道-広島間 196.4キロ)で見れば鉄道で二時間台にするのは難しく見えませんが、とにかく線形が悪過ぎます。
木次線は出雲横田以南は最高でも 65キロ毎時しか出せず、芸備西線も 85キロ毎時しか出せません。
せめて全線に亘って 95キロ毎時出せれば何とかなりそうですが、それだってかなりのコストが掛かります。
*各所の短絡線整備
加えて、備後落合や出雲坂根のスイッチバックが高速化を妨げます。
このため、路線高規格化に加えて最低でも
- 比婆山-油木間
- 出雲坂根駅北-三井野原駅南間
の短絡トンネルの整備も必要でしょう。
更に、
- 八次-下和知駅北間
- 加茂中-木次間
も短絡する必要があるでしょう。
これら短絡線はトンネルか高架とし、最高速度 120キロ毎時以上出せるようにします。
□実現にどれだけカネが掛かる?
これらの大改造は広島県と島根県が出資する芸雲鉄道公社(仮称)が実施します。
その上で三次-宍道間を同社が保有して芸雲線として西日本に貸与します。
車輌には智頭急行・HOT7000系のような振り子気動車を投入してまだ残る曲線での減速を減らします。
でも、これらの実現には途方も無い予算が必要になるでしょう。
更に言えば、これだけの事をしても高速バスに勝てるか分かりません。
■観光鉄道化も無理?
"鉄"としては出雲坂根のスイッチバックを残したいところでしょう。
木次線廃止が決まっても、跡地を整備して観光鉄道として再起する案を考えるかも知れません。
神岡鉄道跡地や高千穂鉄道跡地, 三江線跡地等でやっているような事をする訳です。
ただ、
- 『奥出雲おろち号』ですら大した成果が出せなかった事
- 出雲坂根へのアクセスが難しい事
を考えると、スイッチバックだけでやって行けるか分かりません。
■結論:どうあがいても絶望しかない木次線
存続前提でそのための方策をいろいろ考えてみても、それを否定するような現実がどうしても浮上してしまいます。
木次線については、考えれば考える程、どうあがいても絶望しか見えません。
木次線は座して死を待つしかないのでしょうか。
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