かつて『ムーンライト○○』が設定されたのは

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昭和末期から平成一桁の頃まで、各地で青春18きっぷでも利用可能な夜行快速列車が新設されました。

今日ではそれらの大半が姿を消し、今や『ムーンライトながら』『ムーンライト信州』が残るのみとなりました。

では、当時は何故そのような列車が多数設定されたのでしょうか。


夜行バスへの対抗

夜行快速の元祖とされる『ムーンライト』(後の『ムーンライトえちご』『スターライト上野』)は、国鉄末期の昭和61年(西暦1986年)に池袋-新潟間の夜行バスに対応して設定されたと言います。

それから二年後の昭和63年(西暦1988年)、北海道旅客鉄道は札幌-函館間の都市間ツアーバス『オーロラ号』(現在は高速バス『高速はこだて号』)に対抗して『ミッドナイト』を設定しました。

翌年の平成元年12月には西日本旅客鉄道がやはり山陽道のバスに対抗して『ふるさとライナー九州』(後の『ムーンライト九州』)の運転を始めました。

このように、夜行快速列車の新設の背景には夜行バスへの対抗と言うのがあったのです。


夜行快速に適した車輌が余っていた

また、当時はそのような列車に使える車輌が多数あったのも見逃せません。


『ムーンライト』『ミッドナイト』の場合

国鉄及び旅客鉄道各社で急行が風前の燈になって行った結果、165系電車等の急行形車輌は急激に余剰になりました。

また、国鉄分割は特急型車輌の運用にも影響を与えました。

今までは他所への配置転換の可能性からカスタマイズし難かったのが、配置転換の可能性がなくなった結果現地の状況に応じたカスタマイズが自由になりました。

結果、グリーン車用座席が大量に廃車発生し、それらを余った急行形車輌に移植する事で夜行バスに対抗出来るファシリティを実現出来たのです。


西日本の夜行快速の場合

『ふるさとライナー九州』では特に車輌の改造はしませんでしたが、夏季にはスキー用夜行急行『シュプール』が運転されない事からそれ用の車輌を転用しておりました。

その後『シュプール』全廃に伴い通年利用が可能になった事を受け、完全に夜行快速用の車輌に転換してしまいました。

  • 『ムーンライト九州』に限らず、『ムーンライト八重垣』にも転用されております。

『ムーン・ライト高知』では団体用に改造した12系グリーン車を転用しましたが、輸送力を確保するため西日本から特急型客車を借りる事で青春18きっぷでも利用可能になりました。

また、そのお陰で『ムーン・ライト松山』の運行も可能になりました。


『ムーンライトながら』の場合

『ムーンライトながら』はいろいろな意味で例外と言えるでしょう。

元々運転されていた"大垣夜行"について、同時に運転されていた急行『東海』『伊那路』とともに車輌を置換えられたものです。

急行の置換えが主目的だった事から、"大垣夜行"も特急型車輌 373系が導入され全席指定になりました。

結果愛称名を要する事から『ムーンライトながら』が産まれた…と言うのが真相でしょう。


では何故衰退していったのか

しかし、平成10年代から急速に夜行快速列車が衰退していきました。

これには様々な理由があります。


車輌の老朽化

夜行快速用の車輌はほぼ全てが国鉄時代からの中古車輌でした。

当然老朽化の影響には抗えないものがありました。

結局『ムーンライトえちご』『ミッドナイト』はいずれも波状輸送用の特急形車輌に置換えられました。

それまでグリーン車用の座席だったのが普通車の座席となったため、快適さが大幅に減じられたと言う声も少なくありませんでした。

でも、それらも所詮は国鉄車。結局長くは続かず列車ごと廃止になってしまいました。


夜行快速への転用を想定した車輌は作られず

旅客鉄道各社は各社の事情に応じた新車を導入してきました。

特急から通勤電車まで様々な車輌を開発しましたが、収益が低い夜行快速への転用を想定して開発した事は恐らく一回もなかったでしょう。

  • 東海 373系電車は『ムーンライトながら』のために作られたとか自称旅行会社が寝言を言っておりましたが、その後東日本側が持つ国鉄車に置換えられた事実からそれは間違いだった事は明らかです。

複数社に跨る列車は益々困難に

特に国鉄が分割された事で、分割後は他社管内への乗入を想定せずに開発される事が当たり前になりました。

結果、『ムーンライトながら』『ムーンライト九州』など複数社に跨った夜行列車も運行が困難になりつつあります。

例えば、68x系は 485系が全廃された西日本に於いて『ムーンライト九州』後継車と言われておりました。

しかし、北陸を追われたものは 289系と改められ交流電化機器も封印され、恰も「『ムーンライト九州』は絶対運転せえへん」と言いたげな対応をされております。


脱法バスの台頭

そして、本来免許制でありながら、ツアーバスの要件で実質的な都市間バスを実現した脱法都市間バスの台頭は致命的でした。

通年運転していた列車は、恐らく18きっぷ通用期間外の普通運賃での利用で収支を整えるつもりだったのでしょう。

ところが、脱法バスはあらゆる違法行為で運賃を引下げたため、もはやコストを要する鉄道では対抗出来ないものとなりました。

その後、脱法バスは取返しがつかない重大事故を契機に、結局合法化されてしまいました(敢えて「脱法行為の合法化」と表現する)。

もはや鉄道会社が太刀打ち出来る状況ではないでしょう。

結果として、青春18きっぷ通用期間のサーヴィスも容易でなくなりつつなったのです。


利用者のマナー悪化と悪行の横行

また、利用者のマナー悪化(というより違反行為)や利用者でない者の悪行も見逃せません。

いわゆる二席厨等が席を買い占める事で、なけなしの売上を更に落としていきました。

  • 平成28年 6月18日に運転された『スターライト上野』でもそのような事をやった者がいたようです。

更に転売厨の買占めで、本来利用したい者が利用出来なくなり、結果として空席が増える事態にもなっております。

こうした悪行は売上を大幅に落とし、結果として列車の存続を困難なものにしていったのです。


このままだと『ムーンライト信州』だけ生残る?

こうした事情を考えると、このままでは夜行快速は最悪全滅、良くて『ムーンライト信州』だけが生残れるのではないかと思われます。

『ムーンライト信州』は基本的に E257系ではなく波状用の 189系が充当されておりますが、中央東線特急と共通運用は不可能ではありません。

一社完結なので他社の路線の仕様や乗務員の事情を考慮する必要もありません。

同じ一社完結の『スターライト上野』と違い自社の新幹線とも並行せず、逸走のリスクも殆どありません。

青春18きっぷや秋の乗り放題パスがない期間も金曜日を中心に運転されている事を考えると、需要は今もある程度はあるのでしょう。

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